アプリ開発にエンジニアはいらなくなる?評価額約2兆円、Lovableが示す「AIでソフトウェアを作る時代」
「システムを作りたい。でも、エンジニアがいない」——これまで多くの企業にとって、これは大きな壁でした。要件定義をして、エンジニアを探して、開発会社へ依頼して、数百万円〜数千万円と数カ月をかける。そんな世界が当たり前でした。
ところが2026年、この常識を大きく変える可能性のある市場が急成長しています。AIによるソフトウェア開発です。
2026年8月12日、この市場を象徴するニュースが出ました。スウェーデン発のAIスタートアップ「Lovable」が、Series Cで4億ドルを調達。企業評価額は133億ドル——1ドル150円で単純換算すると約2兆円です。設立から数年しか経っていない企業に、なぜこれほどの資金が集まるのか。そこには、「ソフトウェアはエンジニアが作るもの」という常識そのものが変わる可能性があります。
Lovableとは何なのか?
簡単に説明すると、「作りたいものを言葉で伝えると、AIがソフトウェアを作ってくれるサービス」です。
従来、Webアプリを作るにはプログラミングが必要でした。「営業案件を管理できるシステムを作りたい」なら、データベースを設計し、画面を作り、ログイン機能を作り、サーバーを用意する——さまざまな開発作業が必要です。
しかしAIによる開発では、人間が自然な言葉でこう指示します。
「営業担当者が顧客と案件を管理できるシステムを作って」
「会社名、担当者、商談金額、受注確度を登録できるようにして」
「管理画面では今月の見込み売上を表示して」
するとAIが、その指示をもとにアプリケーションを作っていきます。プログラミング言語を書くのではなく、日本語や英語でAIと会話しながらソフトウェアを作る世界です。
「Vibe Coding」という新しい開発方法
このようなAIを使った開発では、Vibe Coding(バイブコーディング)という言葉が広がっています。
人間の仕事が、「コードを書く」から「何を作るかを指示する」へ変化するわけです。
Lovableはどれくらい成長しているのか?
| 時期 | 調達 | 評価額 |
|---|---|---|
| 2025年7月 | Series A: 2億ドル | 18億ドル |
| 2025年末 | Series B: 3.3億ドル | 66億ドル |
| 2026年8月12日 | Series C: 4億ドル | 133億ドル(約2兆円) |
約1年で評価額が18億ドルから133億ドルまで拡大した計算になります。もちろん企業評価額と実際の売上や利益は別物です。それでも投資家が「AIによるソフトウェア開発市場は巨大になる」と考えていることを示す、一つの材料にはなります。
なぜAI開発がこれほど注目されているのか?
理由はシンプルです。世界中の企業が「システムを作りたいのに作れない」という問題を抱えているからです。
例えば中小企業。Excelで顧客を管理している。Excelで案件を管理している。紙で日報を書いている。複数のシステムへ同じ情報を入力している。本当は自社に合ったシステムが欲しい。しかし——開発会社へ頼むほどの予算はない。社内にエンジニアはいない。既存SaaSでは自社業務に合わない。こうした企業は大量に存在します。AIによる開発は、この問題を変える可能性があります。
「SaaSを買う」から「自分たちで作る」へ
ここからが非常に重要です。これまで企業のIT化は「SaaSを探して契約する」方法が一般的でした。CRMならCRMサービス、勤怠なら勤怠サービス、案件管理なら案件管理サービス。それぞれ月額料金を支払います。
しかしAIによる開発コストが大きく下がれば、「自社に合うSaaSを探す」のではなく、「自社に必要な小さなシステムをAIで作る」という選択肢が現実的になってきます。実際、Lovable自身も、財務・コンプライアンス・営業・オペレーションといったさまざまな部署の人間が自分たちの仕事に必要なソフトウェアを作る、という企業利用を強く打ち出しています。
ソフトウェア開発の民主化です。
これは「エンジニアがいらなくなる」という話なのか?
ここは慎重に考える必要があります。結論から言えば、エンジニアがいらなくなるわけではありません。
大規模システム、セキュリティ、複雑なデータベース、金融システム、基幹システム、大量アクセスを処理するサービス——こうした開発では依然として高度なエンジニアリングが必要です。むしろAIがコードを大量に作るようになれば、品質・セキュリティ・設計・テスト・監視の重要性は高くなります。
そして同じ日に、それを象徴する別のニュースも出ています。
AIがコードを書くと、「誰がチェックするのか?」という問題が生まれる
AIコードテスト企業のBlacksmithが、Series Bで4,500万ドルを調達。評価額は5.5億ドル——1年足らずで約10倍になったと報じられています。なぜか。
AIによって一つの仕事が高速化すると、その次の工程がボトルネックになるのです。
これはソフトウェアだけの話ではありません。AIが記事を書けば「その情報は正しいのか」の確認が要る。AIが契約書を作れば「法的に問題ないか」のチェックが要る。AIが仕訳をすれば「正しい処理か」の確認が要る。つまり今後は、「AIが作る市場」と同時に「AIが作ったものを検証する市場」が大きくなる可能性があります。
企業のDXも変わる
これまでのDXは「新しいシステムを導入しましょう」という話が中心でした。しかしAI時代は「どのシステムを導入するか」だけでなく、「自社の仕事に合わせて、必要なシステムを作る」という選択肢が増えます。
- 営業会社なら——案件管理・見積管理・顧客管理・商談メモ・AIによる商談分析を一つにした小さな業務アプリ
- 建設会社なら——現場管理・写真管理・日報・案件管理・見積・AIによる報告書作成
- 運送会社なら——配送案件・車両情報・ドライバー情報・日報・顧客管理・運行データ分析
今までなら「それ専用のSaaSを探してください」だったものが、「まずAIで作ってみましょう」になる可能性があります。
ただし「誰でも何でも作れる」には危険もある
実例:私たちは「AIでシステムを作る側」にいます
ここで、うちの話を少しだけ。Praxenは、まさにこの「AIでソフトウェアを作る」を日本の中小企業向けに実践している会社です。
- 自社の案件管理システム「PRAXEN FORTE」(19画面・546操作)は、人間1人+AIの体制で開発しました。開発の裏側も画面つきで公開しています
- お客様の業務システムも、FDE(現場起点のエンジニアリング)×AIで構築します。従来なら数百万円・数カ月だった規模を、最短2週間・月額制で提供できるのは、まさにこの記事で書いた開発コストの構造変化を使っているからです
- そして「動いたから完成ではない」の部分——セキュリティ・権限設計・運用・ガードレール——を人間が設計し、伴走するのが私たちの役割です。AIが作り、人間が守る。この分業が、AI開発時代の安全な使い方だと考えています
つまりこの記事は他人事の解説ではなく、私たちが毎日やっている仕事の背景説明でもあります。
2026年、企業が考えるべきこと
重要なのは「Lovableを使いましょう」ということではありません。今回の4億ドル調達から見るべきなのは、世界のお金がどこへ向かっているのかです。投資家はAIが文章を書くことだけに投資しているのではない。AIがコードを書く。AIがソフトウェアを作る。AIが仕事をする。AIが作ったものをAIが検証する。——AI産業は急速に次の段階へ進んでいます。
だから企業側も、「ChatGPTを導入するか?」だけではなく、「AIによって自社の仕事そのものをどう再設計できるか?」を考える必要があります。
これまで、大企業にはIT部門があり、スタートアップにはエンジニアがいて、中小企業にはいない、という差がありました。AIがこの差を完全になくすとは言えません。しかし、ソフトウェアを作るための入口を大幅に広げる可能性はあります。営業担当者が自分の営業管理ツールを作る。人事担当者が採用管理ツールを作る。そして必要なところをエンジニアが高度化する。そんな企業の形が当たり前になるかもしれません。
2026年8月12日、Lovableの評価額は133億ドルに達しました。しかし本当に見るべきは、その数字ではありません。その裏側で起きている、「ソフトウェアを作れる人」の定義が変わり始めていることです。
プログラミングができる人だけがシステムを作る時代から、自分の仕事を理解している人が、AIと一緒にシステムを作る時代へ。世界のAI市場は、すでにその方向へ動き始めています。
「うちの業務、AIで作れる?」に答えます
Praxenは、AIで業務システムを作り、セキュリティと運用まで伴走する会社です。
「Excel管理をシステム化したい」「何から始めればいいか分からない」——その段階からどうぞ。
・Lovable「We just raised $400M in Series C funding to help people run their businesses」(2026年8月12日)
・TechCrunch「AI code-testing startup Blacksmith's valuation jumps almost 10x in less than a year」(2026年8月12日)
※資金調達額・評価額などは記事公開時点の公表情報を使用しています。
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